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傲慢と暴食と傷跡の話

マガジン51号。タイトルからアレコレ想像してた5000倍は衝撃のエピソードでした…以下、今のところの感想です。

 

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正直言ってめちゃくちゃ悲しいです。とても悲しい話だった。漫画を読んでてリアルに手が震えたのは久しぶり(※ニアクライマックス以来)でした。よくよく考えれば…というかエスカノールの物語は魔神王戦が始まって外伝とかを通して一貫して仲間のために命をかけることが軸になっていて、その魔神王戦が終わった今、ここでの彼の退場は全く突飛な展開ではないんですが…ここにきて<七つの大罪>が欠ける展開を自分が頭の中で全く想定してなかったというのと、あとやっぱり大罪と出会えたことで始まり終わることが幸せ、そこから外れることはできなかったんだなぁ…と、ある意味あの外伝で描かれた「救済」そのまんまになってしまった、ということがもどかしく悲しいです。悲しいこともあるのが物語の常ですが、エスカノールが死を選んでしまった事実がとてつもなく切ない。でもその切なさ悲しさをただ悲しいと嘆くには、この回はあまりに美しかった。

 

なによりもマーリンとのやり取りが…なんというか、凄すぎた。うーん…私はエスカノールとマーリンについて、まだ描かれていないこと、明かされてない心情がたくさんあって、そういうのがモノローグで描かれてから色々分かったりコマが進んだりするのかなぁと思ってたのですが。今回を見てそれは違くて、もしかしてここに描かれているそのまんまなんじゃないかなぁと思いました。特にマーリンの方の気持ちは、本人の中でも意識して言語化されてるようなものじゃなかった気がします。エスカノールの気持ちは気づいてたし、本人なりに深く受け止めてたからこそのあのセリフ…だけど、実は心密かに思っていた、とか、両想いだった、というよりも、どっちかというと本当にそのままこの状況で出てきたものを返したような実直さを感じて、何だかそれがすごくエスカノールとマーリンらしいと思ってしまったのです。マーリンがエスカノールに恋情を抱いてる、というのはあまり想像できてなくて、モノローグで語られなかった今回が凄くストンと腑に落ちた。といってもかなりの部分を想像を委ねる二人であることには違いなくて、そこもまた二人らしいとも…

 

マーリンのセリフがいちいち衝撃的なんだ…エスカノールの外伝があのストーリー内で綺麗に救済まで描かれて完結しているように見えたことが衝撃だったように、真反対にマーリンは自身の背負った罪の最中にいる、むしろこれから背負う覚悟があるらしいということが衝撃だった。エスカノールがもっと早く思いを告げていたら…とか今になっては分からないことですが、彼女の「もっと早く」は3000年のレベルだったわけです。遅いのオーダーが5年や10年じゃない、七つの大罪として出会う前にとか以前にエスカノールは欠片も存在していない。こんな無理難題を彼女が今、他でもないエスカノールに口にしたのが本当に衝撃。そしてエスカノールが邪道の最中にいるであろう彼女の孤独を直感的に理解していたことを伝え、背中を押したことも…

さっき二人の関係はこの回で描かれたそのままという話をしたけど、マーリンはエスカノールが自分の暗闇に気づいていたとは露も思っていなかったわけで、逆にこのエスカノールの返答で二人の関にある何かが動いたとも言えるんじゃないかなぁとも思ってます。もう少し考える時間があれば…だけど今回はこんな状況なので本当に刹那的に。私は正直この孤独への理解の方はもうちょっと早く口に出してたら何か違ってたんじゃないかなって思うと…つらい…そういうところも含めて、出会った時から遅かった二人はやっぱり悲しい。

 

外伝の感想でも書いた通り私はエスカノールには生きて欲しかったし、仲間のための命…以外の決着を見出してほしかったし、フラれてもいいから生きて欲しかったんだ~!!それは今も変わらないし、基本的にこの一連の物語のベースは悲劇だと思ってます。とても悲しいし、空しい…でも自分の中でどう考えても、死ぬ間際愛してくれた男の傷跡を自分の肉体に刻まんとするマーリンとの、最初で最後一回だけのキス、以上のラストはないと思ってしまう。あまりに最強すぎる。

 

こんな最後の最後に告げられた思いに、絞り出した返答が理屈の通ってないような愚痴という嘘も隠し事もないような実直さだったからこそ、そして反対に相手から思いもよらないような言葉をもらったからこそ、タイミングも何もかもお互いのどうしようもなさが露呈した末のキスだからこそ「思いには答えられなかった」であり今のマーリンがもてる全てで返した親愛があの「傷跡」なのだと受け取りました。あのやり取りの後だからこそ、一辺倒じゃない感情に突き動かされるような衝動も感じたんだと思う。あの、ガチで私はこんなに、こんな美しいキスシーンを私は知らない……美しいし痛いし悲しいし文字通り燃えている。そしてすごく誠実。これは、大人のキスだ…………

 

いやもう分からないけどとにかくそう。あの行為はエスカノールの為でもあったような、マーリン自身へ打ち立てた決意のようなものでもあったような…他でもないあのマーリン自身が、彼女の心の片隅にでも残ればいいと言っていたエスカノールの生きた証になる。逆立ちしても、こんな凄まじい「傷跡」の行方など想像だにできなかったです。度肝を抜かれた。はっきり言って超名作回、というのが私の感想です。

 

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エスカノールと大罪のお別れ回ということで、エスカノールの最期を大罪メンバーとマエル(ここにマエルがいたのはそれなりに意味があると思う!持ち主を失った恩寵は本当にマエルに還るのか)が見送るというエピソードでしたが、実質的に描かれてたのはエスカノールとマーリンの関係性の帰結だったと思います。なんというか…この魔神王戦における彼のエピソードは外伝⇒大罪メンバーへの独白回でも徹底して「<七つの大罪>としての誇りやや愛情や感謝」を軸にした物語になっていたのが印象的で…もっと言えばエスカノール自身の人生の決着の付け所をあの独白回である意味完結させたことで、今回のエスカノールの最期をそのまま「エスカノールとマーリンの関係性の結末」として描いてしまったのが言葉にならないほど凄いな…と思ってます。この構成はあまりに萌えてしまう。エスカノールの最期のはずなのに、彼と対峙したマーリンがとても印象的、かつ考えさせられるような描写になってたなぁと…この回はエスカノールの最期であると同時に、エスカノールとマーリンの結末でもあり、次に駒を進めるであろうマーリンの物語の始まりにもなり得るような回でした。

 

 

正直私はエスカノールがマーリンと結ばれなくても生きていたほうがずっと良いと思ってます。どんなに美しく描写されても死は死ですし、やっぱりそれを超えた正者の物語こそ見たいのです…エスカノールも、マーリンも。でもこの回が二人の積み重ねた関係の帰結としてとんでもなくすさまじかったのです。なんかもう圧倒されてしまったのです。とっても良い回でした。こんな回読んだ日には忘れられないってもんです……エスマリが一生好きだ!!おわり

 

 

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余談

この回を友人に見せたらこの曲を紹介してくれました。あまりにこの回のマーリンにピッタリなので是非……

Every little thing/ good night

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